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書きかけでもパカパカ載せてしまうダメ保管庫
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それいけ! 伊隅ヴァルキリーズ!【3】
マブラヴALネタバレあります
 解釈をつけようなどと思わない事です。





「ではこれで本日の演習評価を終了する。皆、ご苦労だった」
「敬礼ッ!」

 さて、いい加減腹も減ったしPXにでも行きますかね。と席を離れた俺は、だが宗像中尉の厳しい叱責を受ける事になった。
「白銀ッ! まだ今日の予定は終わっていない」
「え? す、スイマセン」
 なるほど、俺を除く全員が先ほどの演習評価の時より真剣な顔で押し黙っているではないか。

 何? この空気――。

 慌てて席に戻った俺をちらりと横目で確認した速瀬中尉が、厳粛な面持ちで、口火を切った。


伊隅大尉の恋を成就させる会


「では、これより『伊隅みちる大尉の恋を成就させる会』定例会議を始めます」

 ああ、うん。そんな事じゃないかと思いました。
 もりもりと全身の力が抜けていく感じだ。さすが夕呼先生直属部隊。やる事なす事半端じゃありません。

 会議に先立ち、と初参加の俺に宗像中尉が説明してくれた事には。元々この会は『神宮司まりも軍曹に恋人を見つける会』だったのだそうだ。どういうわけか、軍曹の教え子は美人で優秀なのが揃っているにも拘らず、恋人がいない、或いは出来ないのだそうで。
 ただでさえ男女比が大きく崩れたこのご時世、特殊任務部隊所属という重過ぎる足枷のある彼女達では仕方がないと言えば仕方がないのだが。例によって余計なことを言う人がいたのが良くなかった。
 曰く『まりもは訓練校時代から何かの呪いとも言えるほど男運がなかったからねー。その呪いがあんた達にも影響してるんじゃない?』との事。
 この言葉を聞いて己の将来に強い危機感を覚えた伊隅大尉が発起人となって始まったのだという。
 件の呪いを断ち切る為に、先ず大元である軍曹に恋人を、というわけだ。

 しかしながら、速瀬涼宮両中尉の思い人は結局どちらの恋人になる事もなく世を去り、伊隅大尉と宗像中尉は未だ足踏み状態のままという悲しい現実を残し、軍曹は先のBETA襲来で亡くなってしまったのである。

「我らA-01部隊にとって軍曹の死が如何に衝撃だったか、分かったかッ!」
 などと怒鳴る速瀬中尉に対し、だからあの時ぶん殴られたのかと、妙な納得を覚える僕がいるわけで。
 正直、自分は何をしていいのか分かりません。助けろ純夏。

「さて白銀。貴様、男としての立場から何か意見はないか?」
 美冴姐さんのドスのきいたハスキーボイスが迫り、俺は手元のプリントを慌てて見渡した。

 目標:前島正樹 帝国陸軍衛士 特記事項:鈍感
 敵甲:伊隅やよい 内務省所属 特記事項:バスト98cm
 敵乙:伊隅まりか 帝国陸軍衛士 特記事項:目標と同い年
 敵丙:伊隅あきら 帝国陸軍衛士 特記事項:目標の弟的存在

「うわ。98って凄いで」
 最後まで言えるなんてどうして思ったんでしょうね? 恐らくは5人から飛んできた右ストレートで空を漂っている時間は、とても長く感じました。

「ふふふ。やってるわね、皆」
 俺が3回のバウンドを終えてようやく着地した頃、聞き覚えのある声と共に白衣の女性が入ってきた。
 そして大尉の手元にあったプリントを取り、面白そうに呟く。
「四姉妹に同時に好かれる男か。興味深いわね……」
 ざわ、と場に緊張感が走った。因みに伊隅大尉は泣きそうだ。

「勘違いすんじゃないわよ、あんた達。私は年下なんて恋愛の対象外よ。いかに幼馴染とはいえ、どうしてこう前島正樹の周りに4人もの女性が集まるのか、興味深い現象だって事。――あら、そう言えば白銀の周りにも女の子が集まっているわね」
 ふーん、と改めて俺の顔を見回す夕呼先生。何か猫科の肉食獣にロックオンされているようで落ち着かない事はなはだしい。

 ――どうして白銀の周りにこうも女子が集まるのか。

 ああ、元の世界の夕呼先生も似たようなことを言っていた。やはり世界は違えど同じ夕呼先生だけあって似たような事に興味を持つんだな。向こうのまりもちゃんも男運はなかったらしいし。
 あの時、夕呼先生は俺を見て何て言ったんだっけ? えーと確か――

「……恋愛原子核」

 ぽかんとする一同。
 その中で、先生の瞳だけが、不気味に光った。

 やべェ、地雷踏んだ。

「白銀ー。今あんた面白い事言ったわねぇ」
「や、や、何て言うンですか、こう。いやそんな事よりアレですよ。オルタネイティブ4! なんたって今はこれが最優先ですよね? 00ユニットの完成目指してまっしぐらな先生の邪魔になるような事は避けるべきですよね! 軍人として! いやさ人として!」
「『恋愛原子核』このネーミングセンス。間違いない。向こうの私の理論ね! 答えなさい白銀ッ! 向こうの私は一体どんな理論を完成させたの! ああもう、悔しいわ。量子電導脳の理論でも向こうの方が一歩先だったってのに! くッ、私に向こうの私ほどの暇があればッ! さあ答えなさい白銀ッ、白銀ぇぇッッ!」

 ガッデム。聞いちゃくれません。

 仕方なく、覚えている限りの事を伝えた。キラリキラリと輝く先生の瞳に恐怖を感じながら。

「なるほど。向こうの私もまだ実験段階なのね。でも素晴らしい、素晴らしすぎるわ! この理論が完成すれば、きっとまりもの呪いは解けるッ! 待ってて、まりも。もうあんたに悲しい思いはさせないわ!」
 死んでますよね? まりもちゃん。

「あんた達も聞きなさい! これが完成した暁には誰でも異性に大人気になれる時代が来るのよっ!」
 おおッ、と意気が上がる伊隅ヴァルキリーズ改め伊隅みちると愉快な仲間たちの皆さん。
「もう、誰にもあんた達を女たけし軍団なんて呼ばせないわッ!」
 おおおッ、と歓声を上げる伊隅みちると愉快な仲間たち改め女たけし軍団の皆さん。
 てか、ビートたけしいたんですね。この世界。少し驚きました。

 夕呼先生と俺の名前が英雄を讃えるように連呼されるA-01部隊詰め所をそっと抜け出した俺は、何故か流れる涙を拭いながらドアを閉じた。

 乙女心なんて分からない俺に、彼女達の心情など理解できない。
 まあいい。まあいい。
 それでも、人類がこの星に生き残るなら、BETAをこの地球から駆逐出来るのなら。
 俺は、どんな珍妙な連中の面倒だって見よう。

 だから、ほんの僅かに希望します。

 ――どうか先生がオルタネイティブ4の事を忘れませんように。
 ――ちゃんと仕事してくれますように。

「たった今からA-01部隊は全力をもってこの新理論の完成を目指すわよ!」
「「「はいッ!」」」

 ダメらしいです。短い希望でした。



 その後。
 前島正樹氏を審査員として、伊隅四姉妹による料理大会が開かれたのだが。
 遥か他星系を目指して地球を脱出した10万人の中に、その詳細を知るものはいない。




 ――次のループへ続く。
| マブラヴAL | 19:10 | comments(12) | trackbacks(135) |
それいけ! 伊隅ヴァルキリーズ!【2】
マブラヴALネタバレあります
 深く考えたらダメでもあります。





 元の世界で読んだ漫画で、額にバッテン傷の付いた中佐が言っていた。
 幽霊なんて基地のアクセサリーみたいなものだ、と。
 読んだ当時はシャレがきいてるなあとしか思わなかったが、いざ自分が軍の基地でそれを目の当たりにすると感慨もひとしお、どころの話ではない。
 お払いを頼もうにも、この辺りに神社なんかもうない。
 いやはや――困ったものだ。


孝之サン


 とある日の深夜。うささんを抱いた霞をがっしと抱きかかえて眠り込んでいた俺は、何か耳元に冷たい吐息を感じて目を覚ました。
 何だ――?
 各部屋の扉に鍵なんて無いので、或いは彩峰辺りが悪戯でもしに来たかと思った。まあ彩峰なら霞の事はバレてるし、合成焼きそばで懐柔も出来る。下手に取り繕う必要もなし。さっさと返り討ちにして帰ってもらおう。
「ていッ」
 と繰り出した手刀は、だが空を切った。ぬう、やるな。などと思いつつ、部屋の電気をつける。きっと眠れなくて話し相手でも欲しいのだろう。

「どうした? こんな時間……に?」
「いやあ、はっはっは。こんばんは」

 予想に反してそこにいたのは彩峰でも美琴でもなく、見知らぬ青年士官だった。
 しかも――

「なんか透けてるッ!」
 霞を起こさないように小声で叫んだ俺に、彼は爽やかにグッと親指を立てて見せた。


 鳴海孝之少尉、というらしい。かつて俺と同じA-01部隊に所属していたんだそうだ。随分と気さくな人で、まだA-01が伊隅中隊だけではなかった頃の話を色々と聞かせてくれた。
 陽気で勇敢で、一流の衛士だった、今は亡き先任達の事を。彼らが己の生命を賭して立ち向かった、困難で過酷な任務の事を。そして話している内に気がついた。
 この人は――速瀬中尉と涼宮中尉の思い人で、99年の明星作戦で戦死なさったという……。

「ですよね?」
「……明星作戦? なにそれ」
「いやほら、本州島奪還の作戦で、最終的にココにあった横浜ハイヴに2発のG弾を落としたっていう」
「へえ、そんな作戦があったんだ」
「あの。鳴海少尉はその時に戦死なさったんじゃ」
 ないんですか? とは聞けなかった。うつむいた彼の、物凄く情けなさそうな顔を前にして。
「ああ、そういう事に……なってるんだ」

 後に白銀武は語る。「この瞬間、ダメな空気が流れ出しました」と。

「あの、鳴海少尉は」
 いつ、どんな状況で亡くなったんですか?
「いやあ。俺さ、どういうわけか速瀬と涼宮さんの間で板ばさみになっちゃってな。その雰囲気が辛かったもんで、つい整備の女の子に手ェ出したら――。ある時……伊隅中隊の連中に」
「もういいです。もういいです。もういいです」
 聞かなきゃ良かった。
 速瀬涼宮の両中尉が事あるごとに"明星作戦で戦死した思い人"の話をするのはきっと、そういう事にしておこうという自己暗示の為なんだ――。

 あはははは、と力なく笑う鳴海少尉。自分にも思い当たる節があるので、ツイと背筋に冷や汗が流れた。冥夜に手ェ出さなくて、本当に良かった。

「いやでも、君の周りは良い子ばっかで羨ましいよ」
「はあ。で、でも速瀬中尉だって基本的には良い人だし、涼宮中尉なんて極東最高の癒し系軍人で」
「うん? まあ、あの二人はそうだけどな」
「俺の方なんて、冥夜はやたら気位高いし、委員長と彩峰は喧嘩してばっかだし、美琴は人の話聞かないし、たまは猫だし。一応本命の純夏は情緒不安定だし」
 霞は――除くとして。

「うん。でも拉致監禁して女装を強いるような人はいないだろ?」

 この辺りでダメっぽい空気が更に淀みました。と、後に白銀武は語る。

 そんな面白い、もとい危険思想を持った人がいたんですか。そう、目で問う俺に、鳴海少尉は物凄く肩を落として答えた。
「いたんだ。――緑の髪で、マナマナっていう人が」
「緑の髪?」
「うん」
「マナマナ?」
「うん」
 それはまさか。
「本当は、普通に心優しい人なんだけど、思い詰めると人が変わるっていうか……」

 緑の髪――。
 マナマナ――。
 本当は優しい――。

 月詠さんかーーッ!?

「そ、そんな馬鹿なッ! まさかあの人が」
「白銀君。君、あの人を知っているのか?」
「え、あ、はい。俺も結構世話になってるンで」
「そうか。ああ確かに君の立場ならあの人と関わる事も多いだろうな」

 君の立場=危険な任務の多い衛士
 あの人=衛生兵

 ちゃんと説明して欲しかったです。名前で呼ばなかった僕も悪いんですが。と、語った時の白銀武は目に涙を浮かべていたそうだ。

「で、でも鳴海少尉ッ! あの人がそんなヤバイ人だなんて」
「白銀君。人は、特に女はね――見かけで判断すると痛い目にあうんだ」
 俺のようにネ。そう言って彼は俺の肩をポンと叩く。
 その瞬間、思い出した。
 元の世界で、尊人に異様に熱い視線を送っていた月詠真那さんの姿を。
 あの月詠さんはショタ疑惑の絶えない人だったが、こちらの月詠中尉は美琴には特に興味なさそうで、それは美琴が尊人じゃなくて美琴だからで、彼女がある意味特別な視線を向けるのは知る限りじゃ俺だけで――。
 ダバダバと冷や汗が流れる。

「気をつけろよ、白銀少尉」
 そんな俺の状態を見てとった鳴海少尉は、俺は関わり合いになるものかといった顔で、スーッとフェイドアウト。
 最後に「まあ気付いた時には終わりかも知れんけどね」と言い残して。

「な、鳴海少尉ーーッ!」

 残された俺は、せめてもの予防にとドアにつっかい棒を掛ける以外には、うささんを抱いて眠る霞をがっしと抱きしめて、震えて眠るしかなかった。
 震えて眠るしかなかった。



 後日。
 斯衛軍の某中尉は気に入った男を拉致監禁調教の上、肉体改造するという噂がまことしやかに囁かれ、結果、紅い武御雷が国連軍横浜基地で大暴れするという事件が発生。
 この事件の真相を知る者は、10万人の残存人類の中には、一人もいなかったという。




 ――次のループへ続く。
| マブラヴAL | 15:48 | comments(1) | trackbacks(0) |
それいけ! 伊隅ヴァルキリーズ!【1】
マブラヴALネタバレあります





 言うまでもない事だが、この世界には娯楽が少ない。およそ遊びといえばお手玉や剣玉、あやとりにおはじき、良くて将棋くらいなもんである。
 これはもう仕方が無い。長年続いたBETAとの戦争で人類には娯楽に力を注ぐ余裕が無いのだ。そしてそれはTV番組にも言える。教育、ニュース以外には戦意高揚、或いは国民意識を高めるプロパガンダ放送の類ばかりである。よってバラエティー番組など持っての他。お笑いの要素と言えば、子供向けの教育番組にそこはかとなく感じられる程度だ。
 元の世界で愛してやまなかった漫才など、ここでは見られよう筈も無い。そもそも、大東亜戦争以後も大日本帝国が存続したこの世界では、お笑いの文化など、落語を中心とした寄席演芸が上方で細々と続いたくらい。漫才という芸が一般に知られる土壌そのものが無かったのである。
 だから、俺が教えた。先ず手始めに、たまと美琴に、ボケとつっこみを。

 これがいけなかった――。
 とてもいけなかった――。


スター誕生


「悠陽!」
「冥夜の!」
「「将軍コントー!」」

 何故か異様に楽しそうな将軍殿下と冥夜が「でゅわでゅわ ぱぱぱやー」とか言いながら登場し、講堂の舞台に据えられたマイクの前に立つ。それだけで場内は大盛り上がり、なのである。
 そして冥夜、キッと顔を引き締めておもむろに片膝を着く。
「殿下! クーデターです」
「よし、斬れ!」
「殿下! 米軍です!」
「よし、斬れ!」
「殿下! 米が足りません!」
「よし、斬れ!」
「殿下! 諦めたらそこで試合終了です!」
「よし、斬れ!」

 わけが分からない――。
 だと言うのに、お客さんはドッカンドッカン笑ってらっしゃるのである。月詠中尉は月詠中尉でハンカチで目頭を押さえ「ご立派です」とか言ってるし。
 そんな場内の喧騒をよそに、俺はそっとその場を抜け出そうとしたが、それは叶わぬ願いだった。がっちりと、霞に腕を取られていたのである。
 すかさずプロジェクションが彼女から飛んでくる。

 ――責任、とって下さい。白銀少佐。


 元207訓練小隊6人だけのブームだった漫才は、だがあっという間にA-01部隊のブームになり、程なくして横浜基地全体のブームになった。至る所でコンビやトリオが組まれ、時間さえあればネタ合わせに勤しむという珍妙な事態になってしまったのである。
 どういう訳か、クーデター事件以来横浜基地に入り浸っている将軍殿下を筆頭に、古参の衛士が、うら若い衛生兵が、果てはお堅いと思っていた伊隅大尉までもが、漫才の腕を日々競い合っているのである。
 ちなみに、伊隅大尉は宗像中尉、風間少尉と3人で『トリオ・ザ・乙女』を結成し、自虐ネタを中心に活動している。伊隅宗像がボケて、風間姉さんが「そんなだから男に告る事も出来ないのよ」と突っ込んで締める芸は、特に若い女性を中心にカルトな人気を博しているらしい。
 ついでに云えば、ヴァルキリーズの他の面々は――。

 美琴とたまは会話がまったく噛み合わないWボケが売りの『シュート&サヴァイブ』
 委員長と彩峰は最後に必ず殴り合いの喧嘩になるドツキコンビ『眼鏡ヤキソバ』
 速瀬中尉と涼宮妹がとにかく早口で喋り捲る『ザ・マシンガンズ』
 涼宮姉はピアティフ中尉と組み、不条理ネタで攻める『CP企画』
 一人浮いた柏木はウクレレ片手にエロネタを連発する『柏木☆はるこ』

 といった感じである。

 ここまではまだ良かったのだ。ここまでなら良かったのだ。
 殺伐とした国連軍基地に、漫才ブームという一陣の風を吹かせ、たとえ一時でも皆の顔に笑顔を取り戻す。
 それで済めばよかったのだ、が――。

 ただ一人、このブームを天啓と捉えた人間がいた。
 こんなキテレツ事象をガチンコでBETAとの戦争に役立てようというのである。
 名は云うまでも無い。香月夕呼博士、その人である。

 「オルタネイティブ3.5」
 BETAにお笑いを理解して貰い、なぁなぁな感じで和平に持ち込もうという計画である。
 目標は喀什のオリジナルハイヴ最深部。いわゆる「あ号標的」。
 無論、普通の人間ではBETAとコンタクトが取れない。故に、プロジェクション能力を持つ00ユニットと霞の二人で結成されるコンビ『カスミカ』がそこで人類の命運を掛けた漫才を披露するという作戦である。
 その腹案を内密に聞いたときは、てっきりいつもの冗談かと思っていた。

 が――。

 ラダビノット司令が、有用性アリと、認めてしまったのである。
 国連本部が、この計画を、承認してしまったのである。
 米国議会も、全会一致で、支援を申し出たのである。
 オルタネイティブ4が、計画凍結に、なってしまったのである。

 ――お前ら正気か!?
 腹の中で散々毒づいてはみるものの、上からの命令に逆らえない、悲しい軍人気質に染まっている俺がいるわけで。

 結局、この世界にお笑いの風を持ち込んだ俺は、オルタネイティブ3.5のオブザーバー兼、「カスミカ」のプロデューサーという極めて重要な地位を与えられることになった。それに伴って、一日に3回昇進の辞令を受けるという異例の措置により、少尉から一気に少佐にまで昇進した。
 基地の皆からは異様に熱の篭った尊敬の視線を受けるようにもなった。
 名は明かさないが、ヴァルキリーズの隊員の内、8人から告白を受けたりもした。
 ただ、――霞の視線だけは冷たくなったのが辛かった。
 カムバック、俺のバニーちゃん。

 狂気の沙汰としか思えない「オルタネイティブ3.5」は、だが大きな利点も備えていた。こと爆発による被害であれば、S-11での自爆であれムアコック・レヒテ機関の暴走であれ――アフロになるだけで済むのである。
 この利点のおかげで、伊隅大尉他、普通なら絶対死んでるという状況から生還する者が続出したのである。
 ただ婚期は遠のいたらしい。


 で――、色々あった挙句、「桜花作戦(笑)」が行われる次第となった。
 因みに、"括弧笑い"まで含めて正式作戦名である所に、非常に不安を覚えているのは、10億人の残存人類の中でも、俺と霞だけだった。


  ・
  ・
  ・

 ……旅立つ若者達よ。
 諸君に戦う術しか教えられなかった我等を許してちょんまげ
 諸君を戦場に送り出す我等の無能を許してちょんまげ

 ……願わくば、諸君のネタが、
 若者を演芸場に送る事多き世の礎にならん事を」

 ちょんまげはないですよね? しかも若本ボイスで。


 青い地球。
 遥か眼下に見える故郷の姿を、ともすれば潤みがちになる瞳に捉え、俺はぼんやりと口を開いた。
「なあ、霞」
「……なんですか?」
「俺の作ったネタ。BETAに通じるかな?」
「……『三軒隣の家に囲いが出来たってね』『へー、すげえ格好いい』」
「……」
「……」
「……だめ、かな――?」
「……ダメでしょう。全然」
 ダメですよね? 実は僕もそう思ってました。



 なんでこんな事になっちゃったんだろう――?

 再突入を前に、俺はシートに蹲って、みっともなくむせび泣いた。




 ――次のループへ続く。
| マブラヴAL | 08:49 | comments(5) | trackbacks(0) |